ブックレビュー|柞刈湯葉『横浜駅SF』
カクヨムで話題になってた頃からまとめてキチンと読みたいとは思っていたので、それが紙の書籍になってくれてまずは諸手を挙げて歓迎。
もう、聞いた設定だけで、傑作間違いなしみたいなくらいに素晴らしいネタじゃないですか。こんな心くすぐられる設定、よく思いついたなあ。
読む前からワクワクと楽しみだったのなんて、ホントにいつ以来の期待感だろうね。
営業開始以来100年経ってもずっと建設中というJR横浜駅の現実世界を巧みに翻案した”自己増殖する横浜駅”なんて設定も心ニクい限りなんだけれど、
「エキナカ」に「青春18きっぷ」それに「自動改札」などなど、心くすぐられる設定がこれでもかっていうくらいにちりばめられてて、それだけでも(少なくともJR東日本を利用している者にとっては)限りなくセンス・オブ・ワンダーを堪能させてくれる。ホント、天才かよ、と。
だが残念ながら小説そのものの面白さとしてはちょっとだけ欠けている。各々のキャラクターの結末がどうなったのかを読者は知りたい(ハズ)なのに、それが描ききられることなく尻切れとンポのように収束してしまった。
あとがきを拝見するとどうやらまだ続きがあり近日刊行の予定のようなので、そちらを期待することにしよう。
是が非でもここはキチンとした物語の結末を見せ我々読者の溜飲を下げて欲しい。
で、星雲賞か日本SF大賞くらいはひっさらっていってほしいよね。
…ひょっとして、この小説も永遠に増殖し続けて終わらない、ということになったりは…しないよね??
[2017/04/23読了]
付記:
~ところで最近弐瓶勉原作の劇場アニメ『BLAME! ブラム』というのを観たのだが、
“都市が自己増殖する”とか(こっちは都市でなくて駅だけど)、
秩序を維持させるための自立機械なんか(自動改札ね)があったりと、
この『横浜駅SF』と類似してたりするんだが…
ま、偶然の一致でしょう、ね。
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